トリミンググルーミング、カットやシャンプーとペットのお手入れにまつわる言葉は聞きなれないうえに、違いが分かりにくいといわれています。

実はこの言葉の使い分けには明確な定義がなく、プロトリマーの間でも曖昧なルールのままで活用されています。今回は曖昧な言葉の由来と使分けについて詳しくご説明させていただきます。

この記事の執筆・監修者
大谷幸代ペット専門学校講師
氏名大谷幸代
専門分野トリマー、トレーナー
著書新しい家族のかたち保護犬・保護猫と暮らすときに知っておきたい10のこと

グルーミングとは?

グルーミングとは?の説明画像
グルーミング

グルーミングとは英語の“groom”に由来する言葉で、意味は「毛づくろい」「動物のお世話、お手入れ」です。

ペットのお手入れをする人を「グルーマー(groomer)」と呼び、ペットのお手入れ自体を「グルーミング(grooming)」と呼びます。

トリミング

「トリミング(trimming)」という言葉には「きれいに整える」「形を調整する」という意味があり、最近ではカメラで撮影した画像を加工する際にトリミングという言葉を用いることが増えています。

日本では、ペットのお手入れをシャンプーやカットと呼びますが、海外ではグルーミングとトリミングの違いを完成度で区別して呼ぶことが一般的です。

グルーミングとはペットに必ず必要なお手入れの意味

グルーミングは爪切りなどペットに必要なお手入れのことの説明画像

海外ではグルーミングは「ペットに日常的に必要なお手入れ」「健康で衛生的な生活を送る上で最低限必要なお手入れ」という意味で用いられます。

つまり

グルーミングとは
  • 爪切り
  • 耳掃除
  • ブラッシング
  • 肛門腺絞り
  • 足裏、足回りの被毛のカット
  • シャンプー

などを意味し、自宅で飼い主が定期的に行う内容を意味します。

一方の「トリミング」という言葉は、高度な技術を持つ専門家が、十分な費用を受け取り行うお手入れに用いられます。

例えば、ドッグショーへ参加するための高度な技術を要するカットを施したり、セレブの愛犬がパーティに参加するための特別なお手入れを行うことをトリミングと呼びます。

ペットの専門家自身も自分の職業や経験をアピールするためにあえて、グルーマーではなく、トリマーと名乗ることもあります。

グルーミングは自宅で完了を目指しましょう

自宅で愛犬をカットする時は、暮らしやすさや暑さ対策、カットの簡単さを優先し、飼い主がバリカンで済ませますが、プロトリマーに依頼する場合は専用のハサミで毛先をわずか数mm単位でバランスを考えながら切りそろえてゆきます。

爪切りや耳掃除などのお手入れは毎月定期的に済ませなければならない習慣ですから、根気よく愛犬に教えながら、自宅で済ませることができるように練習を重ねてゆきましょう。

各地で無料開催のお手入れ教室が開催中

無料開催のお手入れ教室の説明画像

犬にとって体の末端である爪先は急所です。たとえ家族であっても触れられたり、強く握られることがあれば条件反射的に拒絶反応を起こし、噛みついてしまうこともあります。

これはしつけや厳しく叱る、しっかりと抱きしめ固定するという対処法だけではなかなか効果がありません。愛犬自身も悪意があって、家族に激しく抵抗をしているわけではなく、動物だからこその防衛本能だと理解してあげましょう。

自宅で爪切りはもちろん耳掃除やシャンプーまでお手入れを完了させたいと思いつつも、いざ挑戦してみると想像以上に難しい、爪切りを購入してみたものの使い方がわからないという方も少なくありません。

でも諦める必要はないので、ご安心を。

実はトリミングサロンや動物病院、ペットショップ、ペット関連イベントなどでは定期的に“無料お手入れ教室”が開催されています。

これはプロのトリマー達が飼い主さんにペットのグルーミング方法をレクチャーする無料講座です。

愛犬と一緒に参加はもちろん、見学や質問をするだけでも十分、お手入れの方法を習得できます。

なぜプロが無料で教えてくれるの?

無料お手入れ教室と聞くと、気になるものの、やや不安を感じる方もいませんか?

トリミングサロンや動物病院では有料で爪切りやシャンプーを引き受けています。にもかかわらず、飼い主に自宅でのお手入れ方法を教えるということは、店舗の売上減少や客離れを引き起こすのでは?本当に無料なの?と勘繰るのも当然です。

実はプロトリマーであっても、犬猫のお手入れは簡単なことではありません。爪を切るだけで噛みつかれることもあれば、シャンプー前のブラッシングや下準備に相当な時間がかかることもあります。だからこそ、日ごろから飼い主さんに自宅での定期的なお手入れを習慣化して欲しいと切実に願っています。

日ごろから爪先に触られることになれている犬ならば、トリマーの爪切りもスムーズに受け入れてくれます。ブラッシングを週に数回済ませてあれば、毛玉やもつれがなく、カットの仕上がりも格段に美しくなります。

ペットのお手入れは家族だけ、トリマーだけで完結するものではなく、お互いが協力することでよりよい効果につながってゆきます。ぜひ無料お手入れ教室の案内を見かけた時は気軽に参加してみてください。

定期的なグルーミングをサボるとどうなるの?

グルーミングをサボってはいけない説明画像

忙しい、愛犬が嫌がる、上手にできない・・・色々な理由でつい愛犬のお手入れをサボってしまっていませんか?

グルーミングと呼ばれる

  • 爪切り
  • 耳掃除
  • 肛門腺絞り
  • 足裏足回りの被毛のカット
  • シャンプー

これらは月に1回が目安です。このお手入れをサボってしまうと、伸びすぎた爪は体を掻いた時に皮膚に無数の傷をつけ、歩く時は爪先が曲がり関節に余計な負荷がかかります。

耳内部には雑菌が増殖し、悪臭を放ち外耳炎などの深刻な症状を引き起こします。絞られずにたまった肛門腺は、ある日突然破裂し、手術が必要になる場合もあります。

お手入れはしなくても大丈夫、シャンプーだけしておけば完璧と誤解をせずに、犬には月に一度、全身の定期的なお手入れが欠かせないと知っておいてください。

なぜ日本ではトリミングと呼ぶのか?

海外と違い日本ではペットのお手入れ全般をトリミングと呼びます。これはトリミングという文化が日本へ取り入れられた背景に大きく関係しています。

プードルやマルチーズ、シーズーと日本で人気の小型犬はどれも定期的なカットが必要です。自宅でもシャンプーやカットはできるものの、完成度や手間暇を考えるとプロトリマーに依頼しているというご家庭が圧倒的です。

日本にトリミングという文化が定着し始めたのは、今から30年程前です。

当時の日本では犬は番犬として屋外で飼育することが当たり前で、ペットを室内で飼育することも定期的にプロに依頼しシャンプーやカットを施すという習慣もなく、ペットに高額な費用をかけ、繊細なカットを施すことは一部の富裕層の趣味と受け止められていました。

このような時代だったからこそ、犬をシャンプーカットすることや日常的なお手入れをすることは、特別な習慣であり、繊細な技術を要するからこそ海外に習ってトリミングと呼ばれるようになりました。

つまり日本ではグルーミングと呼ばれる飼い主が自宅で簡単に済ませるお手入れという習慣そのものが当時は無かったのです。

日本人はペットにはお手入れが不要と思っていた?

これは決して当時の日本で犬が愛されていなかったからではありません。

当時の日本で大多数を占めていたのは、短毛、中型の日本犬や雑種です。つまり定期的なカットの必要なく、爪切りや耳掃除を定期的に行うこともさほど重要視されていなかったからです。

長毛や垂れ耳、カールした柔らかい被毛を持つ洋犬には欠かせないお手入れも、寒さに強く、固く短い被毛を持つ立ち耳の日本犬には不要だったのですから、仕方がありません。

トリミングサロンによって施術内容は様々

トリミングサロンによって施術内容が違うの説明画像

実はトリミングサロンの施術内容は全国共通のルールや基準がなく、料金も様々です。これは日本のペット関連サービスの実に80%近くが個人経営だからです。

例えばシャンプーコースを利用する場合、

ある店では、シャンプーとドライヤーのみで完了します。

別の店ではシャンプー、ドライヤー以外に爪切り、耳掃除、肛門腺絞り、足裏足回りの被毛のカットが施術内容に含まれています。

さらに別の店では、上記の内容に加え、仕上がりにリボンやバンダナを着けてくれるサービスも用意されています。

この仕組みは、トリミングにおいては常識といえるものですが、初めてトリミングサロンを利用する場合、戸惑ってしまうのも当然です。

施術内容と料金のバランスで見極めを

トリミングサロンや動物病院のトリミングを利用する際は、それぞれの店舗ごとの施術内容と料金を事前に確認しておきましょう。

シャンプーコースという同じ呼び名でもただシャンプーをするだけという店舗もあれば、シャンプー以外のお手入れもすべて施術内容に含まれていることもあります。

もし利用したトリミングサロンの施術内容が単にシャンプーだけだったことを家族が知らずにいたら、愛犬は何か月もお手入れをサボってしまったことになります。

個人経営、小規模なスタイルが多い業界だからこそ、自分から積極的に質問をするよう心がけておきましょう。

プロトリマーの時給は1300~1800円が相場

トリミング料金を調べてみると、想像以上に高額で、予約を思いとどまってしまったという方も多いでしょう。「ペットのトリミング料金が飼い主の美容院代より高額」と言われることも少なくありません。

実はトリミング業界は、長年深刻な人材不足が続いています。一人前と呼べるほどの技術習得には3~5年もかかり、毎日の仕事ではペットに噛まれたり、怪我をする危険が常に身近にあります。

経験を積めば積むほどに技術は上達するものの、扱う犬が必ずしも従順でスムーズにお手入れを受け入れてくれるとも限りません。

このような特殊な仕事だからこそ、トリマーの時給は高額に設定されています。この時給から逆算し、自身の愛犬のお手入れにかかる所要時間、手間暇を逆算すると、トリミング料金の設定が妥当な金額と思っていただけるでしょう。

グルーミングはプロと家族の共同作業で習慣化しましょう

愛犬に健康で衛生的な生活を送らせるために、家族のお手入れ習慣は欠かせません。お手入れはプロと家族が協力し、分担しあいながら習慣化するよう心がけてゆきましょう。